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『アーキタイプ(原型)の再定義』
〜Muuto「Fiber Side Chair」。Iskos-Berlinの哲学と、革新素材が紡ぐ用の美〜
「デザインとは、素材を通して物語を語ることである」。
デンマークの気鋭ブランド Muuto(ムート) から発表された「Fiber Side Chair」。
手掛けたのは、コペンハーゲンを拠点とするボリス・ベルリンとアレクセイ・イスコスによるデザインデュオ、「Iskos-Berlin(イスコス・ベルリン)」。
彼らの真骨頂は、誰もが知る「シェルチェア」という普遍的な形(アーキタイプ)を、最先端の素材工学とストイックな引き算によってアップデートすることにある。一見すると極めて「普通」なこの椅子には、現代のプロダクトデザインにおける革新的な知性が潜んでいる。
■ 触覚に訴える「木質繊維」の温もり
イスコス・ベルリンがこの椅子のために選択した最大の特異点が、シェル(座面)のマテリアルだ。
一般的なプラスチックではなく、木質繊維(ウッドファイバー)を独自の割合でブレンドした革新的な複合素材を採用。
遠目には均質な樹脂に見えるが、近づけば微細な木の繊維が視認できる。触れると冷たさがなく、土や木のようなオーガニックな温もりを感じさせるやわらかなマット質感。
「工業製品」と「自然素材」の境界線を曖昧にする彼らのアプローチが、空間に心地よい緊張感をもたらしている。
■ ダスティグリーンの静寂と、シームレスな造形
カラーリングは、北欧の深い森や霧を思わせるくすんだ「ダスティグリーン」。
シェルと同色に塗装されたウッドベース(脚部)が、異素材でありながら視覚的なノイズを完全に消し去り、美しい彫刻のような一体感を生み出している。
どこから見ても破綻のない三次元の曲面は、身体を柔らかく包み込み、着座時の自由度を高める。無駄な主張を削ぎ落とした先に現れる、普遍的な用の美がここにある。
■ 日常の道具として育てるアートピース
座面裏の刻印が示す確かな出自。そして、脚先に残るスクラッチ傷や塗装の剥がれは、この椅子が誰かの日常を実直に支えてきた歴史の痕跡である。
アンティークと呼ぶにはまだまだ若いが、現代のアートピースとしての価値を確かに纏い始めた「ビンテージ」。
過度な神格化を避け、イスコス・ベルリンの哲学に裏打ちされた生活の道具として、飾らずに空間に迎え入れたい。
【ダイニングで、静かな朝を整える】
休日の朝、テーブルにこの椅子を引き寄せる。
洗いざらしのリネンのシャツに身を包み、淹れたてのコーヒーとペーパーバックを広げる。
マットなダスティグリーンが朝の光を柔らかく反射し、ウッドファイバーの質感が身体を優しく受け止める。名作をただ飾るのではなく、現代にアップデートされた「究極の普通」を、日常の道具として使い倒す。
その潔い選択が、あなたの暮らしに確かな充足感と、洗練された余白をもたらしてくれるはずだ。
■2021年1月に製造
■生産国
EEC(欧州経済共同体)
■デザイナー
Iskos-Berlin
・サンクトペテルブルク生まれのBoris Berlin(ボリス・ベルリン)とウクライナ生まれのAleksej Iskos(アレクセイ・イスコス)からなるデザインユニット
■メーカー
Muuto(ムート)
■サイズ 幅495x奥行530x高さ770x座面高460(mm)
■素材
・シェル:プラスチック、ウッドファイバー
・ベース:ソリッドオーク / アッシュ 水性ラッカー塗装
■仕様
・実際に使用されていた商品の為、小傷・小ダコン等はご理解ください。
■メンテナンス:済み
■完成品